災い転じてフク”となる
肺がんの疑いは、CT検査で晴れることとなった。
結果が出るまでの約2週間生きた心地がしなかった。
写真を撮ることもできない。時間が止まっていた。
大切な友達であればあるほど言い出せなかった。無駄に心配をさせて、なんの意味があるか。そして、もし、病気だった時に大事な人たちを悲しみの淵に落とす告白をすることさえも憚れる。
私のことを思って、悲しい気持ちにさせることが申し訳ない。けれども、ちっぽけでつまらない私のために、きっとこの人は悲しむだろうと想像するだけで自分の人生の救いになった。すべては妄想でしかないけれど。
私には、私を思ってくれている人が少なくとも存在すると思えるだけで私が今まで生きていた足跡となった気がした。
疑念が晴れ、足取りも軽く帰宅途中にフグが落ちていた。
生まれて初めて道にフグが落ちているのを見た。ああ、これは福が落ちてきたのかな。そう思って、ゴミ袋に入れて片付けた。
一度死んだかのように、私の人生はまたリスタートになった。一度しかない人生を、楽しもう。
いつも誰かを尊重して生きると思ってから、尊重しないで生きている人がわかるようになった。そんな人にもし傷つけられたら、自分をもっと守ろう。自分自身を、もっと大事にしよう。そう思えるようになった。