原点回帰のとき
自分が何を好きだったかをこの10年で忘れてしまった。
行きたいところも我慢。やりたいことも我慢。自分を押し通すことで摩擦が起こるならばそれを避けたいという性格が災いして、人生においての余白を何で埋めていいのかわからなくなってしまった。
ずっと続けたいことを考えた時、プロの道を諦めた写真をもう一度撮りたいと思った。
あの時、スタジオを諦めたのは、消費される写真を撮って生きることが辛かったことだったけれど、大人になってわかるのは、逃げ道の言い訳をうまいこと言ってるだけだった。
商品写真なんて誰にでも撮れる、うまく仕事を取れるカメラマンは技量よりも性格だと知ったとき、自分には向いてないとはっきりわかったのだった。
あれから何十年も経った。私が、人生で切り取れる瞬間を残したい。誰かのためにではなく、自分のために撮りたい。子供が小さいうちは、写真を撮ることを諦めていたけれど。
諦める人生を、もうやめよう。
そして、ずっと諦めていたカメラを買った。新しいカメラは、新しいカバンよりも新しい靴よりも、新しい服よりも、私を高いところへ連れて行ってくれる。この高揚感。
素晴らしい写真を撮りたいわけじゃない。
私しか撮れない写真を撮りたい。それはきっと、一生探し続けるであろう。
自分が何を続けていきたいのかが少し見えてきた。結局新しい挑戦というよりも、自分が作ってしまった殻を、少しづつ穴を開けて新しい空気を入れることだった。
私が好きだったことって何?母親になる前に。私が好きだったものって何?私が一番ワクワクした瞬間っていつだった?自分の中に問いかけて、少しずつの原点回帰。
カメラは明日届くんだ。